エチュード〜さよなら、青い鳥〜
さわりの30秒ほどを弾いて、初音はゆっくりと振り返った。


「コンクールにどんどんチャレンジして、ピアニストへの道を模索しながら生きていこうって思ってる。人に職業を聞かれたら、自信持ってピアニストって答えたいから。
でも、ピアノで食べていくのは難しいから、しばらくは親の世話になるつもりだったんだけど」

「俺が、君を応援する。ただの普通の会社員には、経済的援助は難しいかもしれないけど、出来る限りのことさせて?」


そんな、四辻の真摯な言葉が初音の胸を打つ。

ーー恋ってこんなものなのかな。運命ってこんなに急に訪れるものなのかな。


初音はそっと腕を伸ばす。初音だけをうつす四辻の瞳をじっと見つめた。

ーーあぁ、この人が、好きだ。どうしようもなく、好きだ。

伸ばした腕で四辻の頭を引き寄せる。


初めて触れた唇は、柔らかく暖かかった。


互いの想いを込めた、キス。


離したくない。


本気で望めば何でも手に入る。
たとえ、それが人の心でも。




この時の初音は、そう信じていた。














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