エチュード〜さよなら、青い鳥〜
苗字に“さん”付けがよそよそしいことはわかっている。だが、名前で呼ぶきっかけがなくて、なんとなくそのままにしていた。

「…そのうちね。
それより今日は、指輪のことを相談したくて。ほら、私、ピアノ弾くから指輪はしたくないの。だから、指輪に鎖を通してネックレスにして身につけようかなって思うんだけど、ジュンさんの意見を聞かせてほしくて。どうかな」

「それって、エンゲージリング?それともマリッジリング?」

「幾つも指輪を貰ったところで、つけられなきゃ意味ないでしょ?だからエンゲージリングは要らない。マリッジリングだけでいい」

「なるほどね、初音らしいわ。涼クンは、どうしたい?」


「俺は、彼女の意見を尊重しますが、1つ、お願いがあります」

「あら、何かしら」

「お金に糸目はつけないと言いたいところですが、自分はごく普通の会社員なもので…。甲斐性なく恥ずかしいのですが、上限額を決めさせて下さい」

四辻の言葉に、ジュンは呆気に取られた。が、次の瞬間、豪快に吹き出して笑う。

「なんて、真面目なの!気に入ったわ!
丹下のお金使わないで、自分で稼いだお金で買いたいんでしょ?
いいじゃない!そういう謙虚さ、最近忘れてたわぁ。わかった、このジュンさんに任せなさい。
最高のリングを用意するわ。もちろん、お金は涼クンと相談するからね」

< 135 / 324 >

この作品をシェア

pagetop