エチュード〜さよなら、青い鳥〜
第4章 異国の地より

四か月

初音は親しい人達に見送られて、日本を飛び立った。


留学直前までドイツ語を猛特訓した甲斐もあり、日常会話なら問題なかった。元々英語は得意だ。ドイツ語と英語でコミニュケーションがとれた。


期間は四ヶ月。ぼんやりしていたらあっという間だ。だから、毎日全力で取り組んだ。


大学教授のディアナ・クラウゼは母と同じくらいの歳で、とにかく忙しい人だ。大学教授としての職務の他に国内外のコンクールの審査員を務めるほか、マーシャ・アルジェリーナの演奏活動には必ず同行している。マーシャがクラウゼ教授を娘のように信頼し、仕事のマネジメントを全面的に委ねているからだ。

マーシャは、気難しい。好き嫌いの差が激しく、気に入らないことがあれば、コンサートを土壇場でキャンセルすることさえある。
マーシャのレッスンは、初音に細かい指示をすることはない。ただ、初音のピアノを聴いた後のマーシャの表情でこちらが察する。どうしても上手く出来ない時だけは、言葉少なめのアドバイスをもらう。


毎日、とにかくピアノ漬け。
日本のことを想う暇もなく、世界中から集まった優秀な学生達に良い刺激を受けながら、初音は濃密な日々を過ごした。







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