エチュード〜さよなら、青い鳥〜
「まぁ、ハツネ、その荷物!
さては、あのおんぼろ学生寮、また雨漏りしたわね?」

スーツケース持参で大学にやってきた初音に、クラウゼ教授は理由を即座に言い当てた。

「そうなんです。『また』ということは今までも?」

クラウゼ教授は、肩を大袈裟なほどすくめた。

「えぇ。何度も修繕してるけど、もうダメね。古すぎなのよ!ハツネ、どうするの?泊まるところはあるの?」
「ホテルにでも泊まります」
「オリガと一緒に?」
「オリガは、友人の所に泊めてもらうそうです」
「あぁ、オスカーの所ね。
じゃあ、ハツネひとりなの?危ないわ。何かあったら、どうするの」

クラウゼ教授は、本当の母親のように心配してくれる。

「大丈夫ですよ。きちんとしたホテルに泊りますから」
「それでも心配よ。可愛い女の子が一人で、なんて。
ハツネ、うちに来なさい。部屋ならあるし、ピアノだってある。いくら弾いても構わないから」
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