エチュード〜さよなら、青い鳥〜

偶然は２回まで

「ん〜？初音、どうした？」

ひょっこりと現れたのは、この会社の社長である初音の父、広宗だ。



「社長」

四辻は、椅子から立ち上がって小さく頭を下げた。そんな四辻に軽く手を挙げて応えると、広宗は娘に歩み寄る。

「面接、気になってさ。
初音。これでもちゃんとした面接だよ、そんな大声だしたら、ダメ。
何があったの？」

初音は父の顔を見て、それまで抑えていた感情が一気に湧きあがってきた。

「こちらの方が、私にコンクールに出場してピアニストになるべきだなんて戯言を。
…買いかぶりすぎ。私には無理！
コンクールなんてとんでもない。国内のコンクールどころか、大学内でも敵わない。
絶対に…絶対にコンクールになんて、出ない！」

興奮して声を荒げる初音の肩を、広宗がポンと優しく叩いた。