エチュード〜さよなら、青い鳥〜

別れの曲

「涼音、というの。私の娘よ。
涼、離婚した後、自分の戸籍を見ていないのね?
離婚後300日以内に生まれた子は、『婚姻中に懐胎したもの』と推定され、出生届を提出すると夫婦の嫡出子として戸籍に記載される。
涼音は、離婚して300日以内に生まれたから、夫だった涼の子供という嫡出推定が働いた。
つまり、涼は、法律によって涼音の父親となっているの」

「俺が、この子の父親…」

驚愕の表情を浮かべる涼に、初音はさらに淡々と続けた。

「もし、法的な親子関係を否定するなら、手間をかけさせて悪いのだけど、裁判をする必要がある。嫡出否認といってね、夫側にしか認められていない権利よ。
訴えを起こせるのは子供の出生を把握してから1年以内。それ以降に嫡出推定を覆すことはできない。だから、今日から1年の間に申し立てを」

「ちょ、ちょっと待ってくれ」

一気に法的なことを捲し立てられ、涼は、頭の整理ができない。
それに、初音は、肝心なことを言っていない。

つまり、この子は涼の血の繋がった子供なのかどうか。


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