エチュード〜さよなら、青い鳥〜
高校生の時、最後に出場したコンクールで演奏したラフマニノフ。
あの頃、毎日必死に練習して本番は完璧に弾けた。コンクールでは金賞を受賞できた。
だが、“丹下の御令嬢だから”と陰口をたたかれた。
音が硬くてつまらない演奏なのに金賞だと、一部から酷評も受けた。苦い思い出の曲だ。
あれから四年。
誰にも聴かせず、一人で弾き続けた曲だ。あの悔しさを忘れないように。
2オクターブ以上、急速に下降していく音に始まる。低音は鐘の音が打ち鳴らされるように強く響く。ドラマチックな始まりに、一瞬で心掴まれる。
情熱的かと思えば、ジャズのような仄暗い艶やかさもある。
とにかく音が粒になってすべて美しく、乱れが全くない。音の数が半端ないというのに、ミスタッチも無い。