冷たい千景くんは10分だけ私の言いなり。
彼女は今まさに俺を見て高揚したように顔を真っ赤に染めている。


わかりやすいくらいのあの態度……。


勘弁してくれ。


もう学園中の噂になっていてこっちはかなり迷惑をこうむってるんだよ。


そんなこと、お嬢様はしらないんだろうけどさ。


そのお嬢様はというと、俺を見るなりどうしたことか両目をぎゅっとつぶってしまう。


それから片目でそーっと薄目を開けようとして。


やべ、今のうちにサッサと通り過ぎよう。


俺は何食わぬ顔をして彼女の前を横切った。


もちろん、そっちを見ないようにして。


毎朝こうして、目も合わせないようにしている。


なぜなら、彼女の要件はわかりすぎるくらいわかっていたから。


いやもうわかりやすいというかバレバレ。


大事そうに手紙を握っているから、おおかた俺へのラブレターなんだろうなって思う。

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