冷たい千景くんは10分だけ私の言いなり。
「べつに俺はまだ諦めてないから」


ぼそりとそう言ったら、伊達はへえって顔をした。


「しばらく会えないくらいで、俺はオタオタしたりしない。
時間に余裕がない時ほどお互いに信じあわないといけない」


半分強がって出た言葉。


ほんとは、電話でも彼女と話せなくなってへこんでいる。


だけどこいつにはそんな弱音を吐きたくない。


「それに体育祭が終わりさえしたらまた元通りに……」


「あれを見てもそんなことが言えるか?」


伊達は正門付近を指さした。


正門前では体育祭実行委員のメンバーが10名ほどいて署名活動をしている。


ここ最近毎日この光景をまのあたりにする。


あいつもいる。たしか拓海っていう名前の花の幼なじみで彼女のことを好きな男。


クラスが一緒なだけではあきたらず委員会も同じかよ。
くそっ、気に入らないな。
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