冷たい千景くんは10分だけ私の言いなり。
「勉強って期末試験の?教えてやろうか?」


そして彼女の機嫌をとるようににっこり笑って手を繋いだ。


「千景くんが、教えてくれるの?」


彼女はぱっと顔を輝かせる。


「いいよ」


「でもこの時間からだと図書室しまっちゃうし」


彼女は遠慮がちにそう言う。


「だったらうちにくる?」


「えっいいの?でも時間が……」


「そんなのもういいって」


体育祭が終わってからも、なんだかんだ言って彼女の方が1日10分ルールを継続しようとしていた。


忙しい俺のことを想ってくれているみたいだけど、なんていうか歯がゆい。
 

俺はもっと彼女に会いたいから。


バイトの時間を削っても、勉強の時間を削っても、睡眠時間だって削っても構わない。


だけど彼女はそんなことは駄目だって言いはるんだよな。


俺の将来のことや家族のこと、彼女は俺自身よりも深く考えてくれている。
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