冷たい千景くんは10分だけ私の言いなり。
「いいって、1日10分でも?」


売り言葉に買い言葉ってやつ。


10分なんて適当に思いついて口にだしていただけ。


さすがに、こんなに短い時間しか構ってやれないと言われたら嫌気がさすだろうな。


だって女子ってやたらと束縛したがるものだろ?


いっそ、そっちから振ってくれないかな。


そしたら全てが丸くおさまる。


しかしそんなズルイことを考えていた俺に、バチがあたったのか彼女の答えは意外なものだった。


「はいわかりました、10分ですね。それでよろしくお願いします」


彼女は嬉しそうにそう言うと、俺の手を今度は両手で包み込みながら小躍りした。


ピョンッて跳ねるから彼女の髪が揺れて、花のような香りが鼻腔をくすぐる。


明るく笑うその顔は、純心そのもので。


まるで、メルヘンチックな花畑にでもいるような妙な気分がした。

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