冷たい千景くんは10分だけ私の言いなり。
借りられそうなスリッパなんかも置いてないみたい。


仕方ないか。


私はローファーを脱いで、靴下のままひんやりとした廊下を歩いた。


そこへ足を踏み入れた途端に、黒い上着を着た生徒達は一斉に私に目を向けてきたのでちょっぴり緊張する。


「おい、あれ見ろよ」


「セレブ学科がなんの用事だろう?」


「なんだかお高くとまってるよね」


えーん、お高くなんてとまってないのに。


ううっ、なんだか嫌味げな声が聞こえててきて肩身が狭い。


俯きながら、早足で廊下の端まで行き、階段を上がった。


こんなことなら、雨城くんとスマホのアドレスをちゃんと交換しておくんだったな。


昨日私の連絡先を書いた手紙を渡したはずなんだけど彼からの連絡はなかった。


いま、突然会いに行ったら彼はどんな顔をするんだろう。


びっくりするかな、もしも迷惑がられたらどうしよう。
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