一夜限りの恋人は敵対企業のCEO⁈【後日談有】
 ものも言わずにベッドに投げ出された。
 抵抗するまもなく、洋服をはぎとられる。
 ……私も同じだけ彼の服を脱がせたけど。
 私たちは上になって下になった。
 あの日の、音楽みたいに。


 私の髪を撫でる、ネイトの優しい手がうなじから鎖骨、胸のふくらみへと辿る。
 誇らしく嬉しく思いながら、彼の手の軌跡を追っていく。
 彼の手がパーツの一つ一つに触れていくたび、私は私の形を取り戻す。
 まるで、ネイトによって作られた楽器みたい。
 私、彼に奏でられてる。


 ******


 夢中だったので私は気づかなかったけれど、ネイトは何度かルームサービスを断っていたらしい。

 素晴らしい時間のあとの体のだるさと、精神的な充足感。
 離れがたくて、お互いの腕の中にいる。
 ネイトが私の背中に腕を回している。
 髪や額、まぶたの上にキスが降りてくる。
 時折、唇にも。
 二人の胸がぴたりと重なりあい、互いの足は絡みあったままだ。
 それだけのことが、嬉しい。

 昨日までの私に教えてあげたい、
『明日の私は、とっても幸せよ』って。

 ……後ろから抱きしめられるのが好きだから、ネイトの胸に背中を預けていたら、いいようにイタズラされてしまった。
 両思いとわかった以上、やぶさかではないんだけど。今は、ね?

 ネイトがあおむけになり、私を彼の上にうつ伏せにさせた。
 あ、この体勢初めてだけど好き。
 ネイトが私の背中に掛布を引き上げてくれた。
 髪や背中を撫でられながら、好きな人の肌に頬を寄せて彼の心音を聴く。


 ……とりあえず会話するだけの余裕が出来たところで、ネイトが聞いてきた。
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