一夜限りの恋人は敵対企業のCEO⁈【後日談有】
「だけど、僕を捨てていったのは許し難い。玲奈、ペナルティーだ。日本にいる間、スカッシュにスイミング。乗馬にも付き合ってもらうよ。勿論、恋人としてのデートもね」
「……嬉しいんだけど。いいの?」

 世界的企業のCEOなんだから、忙しいんじゃないのかしら。

 ネイトがかりかりと頭を掻いた。携帯に打ち込んでくれる。

『Ursprünglich war es ein Urlaub, den ich mit meiner Mutter gemacht habe
(元々、母とデートをするためにとった休暇だったんだ)』

 どういうこと。
 てっきり調査のための来日だと思っていた。

「クロスブレイドは?」

 聞いても目を逸らす。
 彼の伸びてきた髭をひっぱったら、諦めたように携帯をさしだしてきた。

『Ich sagte ihm, er solle Sekretär werden, und kam auf die Idee.
(秘書をやってもらうなんて言ってしまって、咄嗟に思いついた)』
「なんて人!」

 怒ったふりをして彼の胸をたたこうとしたら、拳を持ち上げられてキスされてしまう。

「玲奈の指摘は盲点だった。辛いけれど、身上調査のやり直しを命じさせるよ」

 私は彼の頬に手を添えた。

「自分で言っておいてなんだけど、貴方のためには違うことを祈るわ」

 じゃないと、ネイトやクロスブレイドの開発者に営業責任者が可哀想すぎる。
 ネイトが私の手のひらに口づける。

「ああ。だが、日本人だけの特異体質や環境を特定出来ないと、今後の方針にも関わる」
「そうね」
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