一夜限りの恋人は敵対企業のCEO⁈【後日談有】
「ネイト、その」

 音声も、私が指摘した数か所で不自然だった。
 切ったり貼ったり、順番を逆さまにしていたのだろう。音紋分析にかけた結果を反論材料として公表するのかな?

音声は雑音が煩くて(・・・・・・・・・)拾えなかった(・・・・・)

 どういうこと?
 私が見上げれば、彼は自分で答えを導き出してごらん、といわんばかりの表情だった。
 この人、言葉以外の言語で語るのよね。

 誘導されている気も、なくはない。 
 いいか、謎解きは好きだもの。
 ……たまに『知らなければよかったー!』ってことはあるけど。
 ネイトの恋人である限り、きっとそういうことの連続なんだわ。
 慣れるの、一生無理だろうな。

 ふと、視線を感じて顔を上げてみた。
 ネイトのブルートパーズの瞳が黒みを増して、私を見据えていた。

「玲奈。僕といて、なにを考えてる?」
「I'm thinking of you
(貴方のことよ)」

 わざと英語で私が答えれば、ネイトがうっすら頬を染めた。
 ふんだ。
 やられっぱなしは性に合わない。
 ……多分、私の頬も真っ赤だろうけど。
 ヒュウと口笛が聞こえたけど、私は謎解きに頭を切り替えた。

「ええと」

 私とネイトが行動を共にしていることは、多くの人が知っている。
 勘繰られないよう、先手をうつために映像は利用する。
 一方、音声は編集によるものとの分析結果が出るまで、疑念をばらまいてしまうだろう。
 ううん。
 捏造だったとわかっても、一部の人はネイトや私達を今までのようには見なくなる。
 だから、使わない。
 きっと、そういうこと。

 ネイトの胡散臭いまでに綺麗な笑顔を見て、私の予想が正解だったかなんて、問い詰めないことに決めた。

 ふううう。
 私は息を吐き出した。

「…………駐車場だったしね」
 
 気を取り直し、二本目の指を折る。
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