一夜限りの恋人は敵対企業のCEO⁈【後日談有】
「玲奈ちゃん?」

 私はなんとか言葉を唇から絞り出した。

「ひかるちゃんこそ、深窓のお嬢様みたいだなぁって……」
「またまたぁ〜」
「ほんとのことだもの」

 難しいことなんてなにもない、と楽しそうな様子で樹木の手入れをしている従姉。
 大好きだけど、彼女と一緒にいると、ちくちくとコンプレックスも刺激される。

 彼女は三六五日屋外の作業をしてるとは思えない、華奢な骨格。
 叔父様が『森の熊さん』と呼ばれる体格のしっかりした方なのだけれど、ひかるちゃんが樹木にしがみついている姿はリスかモモンガのようだと可愛がられている。
 
 本人曰く、『手入れ? てきとー』というわりには艶やかな黒い髪に、キラキラしている黒い瞳。
 夢みるような瞳、赤い唇。
 だからかな、着物やワンピースで樹木の傍にいると妖精みたい。 

 ……たまに、うちの家族は私よりひかるちゃんのほうが好きなんじゃないかな、と思うときはある。

 お祖母様やお母様の婦人会にも、にこにこして付き合ってあげているし。
 私と違ってひかるちゃんは、おとなしく和楽器やお華を習っているもの。
 お母様はお祖母様に気を遣って、和の習い事をさせたかったみたいだけど、私はフラワーアレンジメントやヴァイオリンのほうが好きだった。

 ……ひかるちゃんへの反発心からかもしれないと、今なら思う。
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