一夜限りの恋人は敵対企業のCEO⁈【後日談有】
「こじれっぷりも世界レベルだな。やれやれだ」 

 お父様。
 『若い者同士、好きにしなさい』みたいに言われると、しらけるというか。悲劇のヒロインぶってた自分が恥ずかしくなるというか、……ね?

 お父様は私を見てネイトを見て、左右に首を振ってから、ふうううう……と息を吐き出した。
 しっかりとネイトを見据える。

「いいだろう。ミスター、君にウチの株と玲奈を預けよう」
「……なぜ、貴方が『譲歩してやる』という表現をするんだ?」

 やり方はどうであれ、この場合ネイトのほうが正しい主張な気がする。

「私はね、子供たちを目の中に入れたら、痛いからやらないけど。ポケットの中に入れて持ち運びたいくらいには、愛してるんだよ」

 ……慣用句になってない。

「穣は君に我が社の株を預けるくらい、君を信頼しているんだろう? そして君も穣に友情を感じている」
 
 そうだ。
 お兄様は、簡単に株を渡すような人じゃない。
 ネイトも……、お兄様を裏切るような人じゃないと思いたい。

 一夜限りでも、思いを重ねた(ひと)だから。
< 35 / 224 >

この作品をシェア

pagetop