一夜限りの恋人は敵対企業のCEO⁈【後日談有】
 リリーバーはベータ2の他に何種類かあるのだけれど、いずれも違う種類の副作用を引き起こすことがある。
 当初、クロスブレイドは日本以外の国では副作用の症例は少なく、輸入された当初は期待をもって受け入れられた。

「日本のライバル会社による、ネガティブキャンペーンかと思っていたが」 

 そこでちらりと私を見るって、どういうことなんでしょうね!
 私はどんと胸を張った。
 
「馬鹿にしないで! 多賀見は先祖代々、藩主様の薬師を務めてきた家柄なのよ。明治以降は製薬会社になったけれど、根本は変わらず『副作用なく治る薬を提供する』なの。患者様が欲してる薬を私欲で潰させたりしないわ!」
 
 強気でにらんでいると、ネイトがきょとんとした顔をする。

 あ。
 また私、お嬢様っぽくなかった。
 会社では猫を被っているけれど、家族とか気を許している人の前だと猫が脱げるのよね。……この人は敵なのに。
 
「君は企画営業と訊いていたが。他社の薬についても詳しいんだな」
 
 感心したように呟いてるけど、この人の考えていることがわかるような気がする。
 ふん。
 どうせ、コネ入社のお飾りだと思っていたんでしょ。
 
「ドラッグストアで文房具や新聞を売っていただけではないようだ」

 彼の言葉に、私は目を見開いた。
 が、侮辱されて黙るつもりはない。

「アメリカではそうかもしれないけど。ここは日本で、私は薬を売っていたわ」
 
 ……栄養ドリンクや化粧品も売っていたけど。
 それにしても。

「私のことを調べたのね」

 確かに音大卒業後、私は医薬品を販売する『登録販売者』として働いていた。

「未来のパートナーのことを知りたくてね」

 ネイトが酷薄に笑った。
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