一夜限りの恋人は敵対企業のCEO⁈【後日談有】
 音大に進んでわかったのは、私の才能なんて全然飛び抜けていなかったこと。
 一定の規定を満たしていれば、コンクールには出られる。
 けれど聴衆に感銘を与えたかわりに賞賛される人や、プロになれる人。彼らは、私とは別世界にいるのだという事実だった。

 ひたすらレッスンを受けて試験に向かえば、バイトもして恋人もいて、楽しそうなクラスメートが教授から拍手喝采される。
 自分の耳にすら、彼らのほうが情感豊かな音。
 妬ましさと悔しさで体が破れてしまいそうだった。

 彼らに秘訣を聞くなんて、プライドが許さない。
 同じ行動をしてみよう。
 私もバイトを再開して、恋人を作る。
 でも、練習は倍に増やそう。
 負けてはならない、私は選ばれた人間なんだから!

 必死に努力してるのに、空回り。
 なにかが違う。
 その、『なにか』がわからなくて私は焦り、周りにあたり散らした。

 クラスメートから敬遠されはじめていた私は、ひかるちゃんに、しょっちゅうSNSという名のSOSを打つようになった。
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