一夜限りの恋人は敵対企業のCEO⁈【後日談有】
「なんだ?」
「なんでも」
 
 慌てて言い繕った。
 ネイトが疑わしそうに私を見ていたけど、言えるわけないでしょ。

 長く一緒にいたら誤解が解けないかな、とか。……憎まれてるのに一緒にいられて嬉しい、とか。
 いまだってアドバンテージをとられているのに、更なる弱みを握られるわけにはいかない。

 私がだんまりを続けていると、彼は諦めて続きを話し始めた。
 
「未だに原因がつかめてない」

 それはイライラするだろうな。
 今でも私は週に一回はドラッグストア通いをしていて、店のスタッフや仕入れ担当者、薬剤師と話し合う。
 それにMRの懇親会にも参加させてもらっている。
 最近、どちらからもクロスブレイドについて聞いたことがない。
 ……それだけ市場から見放された薬ということだ。

 ネイトが悔しそうに顔を歪める。
 
「クロスブレイドの日本撤退もやむを得ないが、在日の同胞の中には、あの薬が頼りの者もいる。彼らの生命線を断つわけにはいかない」

 株価に響く、て言わないこの人が好き。
 って恋愛感情じゃなくてね、人道的興味というか!
 私、なんで自分に言い訳してるの。

「んんっ」
 
 咳をして無理矢理、妄想を追い出した。
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