一夜限りの恋人は敵対企業のCEO⁈【後日談有】
 ……そのあとの報復が怖くなければ、だけど。

 製薬会社世界ランキングで、クロフォードが上場以来一〇位内をキープしているなか、日本のトップ企業は最近ようやく三〇位内にようやく一社入った、てニュースで報道されていたばかり。
 
 クロフォードに喧嘩を仕掛ける会社なんてどこかわからないけれど、ネイトに叩き潰せない製薬会社は国内にはないだろう。
 
「例えば?」

「そうですね。国の認可を受けて同種の薬が販売されるという情報は、他社よりも早く掴もうとしています」

 どの会社も、競合他社を出し抜こうとしている。
 A社が新薬開発した、B社がC社とD薬の特約店契約を結んだ。
 おばけより怖い単語だ。 
 提携が出来なけれは脅威となりえるが、情報さえあれば先手が打てる。

 薬事ライターなどを使ってしまうと捏造がバレたときに、倫理観が問われてしまう。
 私がこれから言おうとしていることも、倫理観欠落してるけど。
 
 販売された時点から、全国で不買運動が起こるように仕向けていく。
 まずは。

「サクラに薬を買わせる」

 結託した医師の診断書があれば、どうにでもなる。
 今はNETに書き込んでしまえば、ネガティブな噂ほどあっというまに広がる。
 
「SAKURA? ……Cherry Blossomsの日本名?」

 不思議そうに聞かれて、あ、と思った。
 
「日本の隠語というか……。購買意欲や場の雰囲気をもりたてるため、偽客を紛れ込ませたりすることを言うんです」

「なるほど。今回はネガティブキャンペーンの煽動員が購入客にいたということだな」

「ええ。そのあと、検証チームが構成されたときに、チーム長に虚偽の報告を出来る人員を潜り込ませます」

「僕の治験チームが虚偽の報告を行っていると?」
 
 ネイトの双眸が危険信号を発している。
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