一夜限りの恋人は敵対企業のCEO⁈【後日談有】
 ネイトは机の上にある電話機を取り上げると、確認もせずに話し始めた。

「まず、交換を」

 数秒経ってから言葉を続ける。

「二十代の女性に合うスーツ、靴。アクセサリー。そうだな、明るめのピンクベージュをベースに。サイズは4号でウエストは25-26でいい。それと下着。7日分もあれば回せるだろう。化粧品は日本人の肌に合うものを。しっとりしている肌だ」

 なにを言ってるのだろう。彼女へのプレゼントかな。

「ドレス? ……そうだな。ミズ・ヴューラーの国立劇場公演に似合うものを何点か見繕っておいてくれ。宝石はレンタルでいい。あとは美容室に予約を。スキンケア、ネイルもだ」

 ネイトは真っ直ぐに私を見つめた。
 まじりけのない青が瞳の中にねじこんでくるかのようで、身の置きどころがなくなる。
 でも、もっと私をみつめて。
 触ってほしい。
 貴方が触れてくれないなら、私が。
 ……だめ。
 彼は私を信用していない。

 伸ばしかけた腕をもう片方の腕で抱きしめた。

「君を帰さない」

 ドキドキ。
 私だって帰りたくない。
 ううん、ずっと貴方の腕の中にいたい。

「ね、イト……?」
「君は油断ならない。僕がいいと言うまで監視下におく」 

 ときめいて損した!
 この人、絶っっっっ対に性格悪いっ。

「見張って頂いても、なんの悪事も出てこないと思いますが」
「どうだかな」

 決めた。
 この部屋から帰るとき、絶対にネイトのあごに頭突きして、足を踏んづける!
 痛がって悶絶している彼に「あーら、ごめんあそばせ」って、あかんべぇしてから出てってやるわ!
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