冬の雨に濡れて
第9話 父親から娘を買うことになった!
青物横丁の駅から10分ほどで古い2階建てのアパートに着いた。未希の家は2階の左端だという。未希は近くの公園で待っている。ドアを恐る恐るノックする。返事がない。もう一度ノックする。返事があった。ドアが開く。

「何か用か?」

「私は山内といますが、美崎さんですか? 娘の未希さんのことで相談があって参りました。中に入ってもいいですか」

「いいけど、未希はいないよ、家出した」

部屋に入れてもらったが、布団が敷いてあり、酒くさい。

「その家出した未希さんを私が保護しています」

「そうか、それで未希はどうしている」

「なんとか元気に暮らしています。今度コンビニでアルバイトをしたいというので相談にきました」

「アルバイト? おまえが保護して食わせているのではないのか? それにおまえは未希とやったのか?」

「保護しているだけです」

「未希はまだ17歳だ、もし変なことでもしたら、淫行で警察に訴えるぞ」

「未希さんは家へ帰りたくないと言っています。そして、アルバイトをして自立したいとも言っています」

「おまえは俺と同じ匂いがする。おまえは未希をどうしたいんだ? ほしければくれてやってもいいが」

「それなら、私が娘さんと同居する承諾書を書いていただきたい。それから、銀行口座が必要なので未希さんの預金通帳と健康保険証もいただきたい」

「未希の口座なんかない。保険証もない。未払いで停止されている」

「娘のためにわざわざここへ来るなんて、おまえは娘に惚れているのか? それとももうやっちまったからか? 100万円出すなら考えてやってもいいぞ。娘を100万円で売ってやろう」

「俺は生活がやっとで、とても100万円なんか払えない」

娘を売ろうなんて、とんでもない親父だ。でも考えてみれば安い買い物かもしれない。このまま金を払って父親の承諾を得ておけば、未希は完全に俺のものになる。まるで人身売買みたいだが。

「50万円位ならなんとかなる。それ以上はとても無理だ」

父親にしめた! と言う表情が見てとれた。

「いいだろう。すぐに払ってくれ」

「その代わり、娘さんがほしがっているから、銀行口座を作ってくれ。印鑑とキャッシュカードも必要だ。それに娘さん一人だけの国民健康保険証と住所変更のための転出証明書。親ならすぐに作れる。それと俺と同居する承諾書を書いてくれ。それらと引き換えに金を渡す。とりあえず今手持ちの5万円を手付金として払う」

「いいだろう」

「5万円の領収書を書いてくれ。領収書には住所と氏名も。それと携帯の番号を書いてくれ」

それから、父親に分かりやすいように頼んだもののメモを残してきた。俺の名前と携帯の番号も書いて、分からないことがあったら連絡をくれるように言ってその場を離れた。

とんでもない父親だった。それに未希は17歳だと言っていた。やはりそうか、ひょっとするとそうじゃないかと思っていた。やはり未希は嘘を言っていた。迂闊だった。これは本当にまずい。父親の出方次第で下手をすると淫行で逮捕もあり得る。公園のベンチで未希が待っていた。

「未希、17歳と言うのは本当か?」

未希は頷く。

「18歳と聞いて信じた俺も迂闊だったが、親父さんに淫行で警察に訴えると脅された」

「ごめんなさい」

「まあいい。親父さんは未希を金で売ると言うので、俺は未希を50万円で買うことにした。その代り、銀行口座や保険証などを作ってもらう約束をしてきた。50万円は未希に身体で返してもらう」

未希は黙っていた。

それから未希は立ち上がって俺の手を引いて歩き出した。未希にはショックな話だったに違いない。私は父親にこの男に売られたと!
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