半妖の狐耳付きあやかし令嬢の婚約事情 ~いずれ王子(最強魔法使い)に婚約破棄をつきつけます!~
「カマルの、お嫁さんの故郷、かぁ……」

 娘さんをくださいと、小説のヒーローがヒロインを迎えに行く構図が頭に浮かんだ。やっぱり少し羨ましくなった。

 相手のメイというあやかしの女性も、心配して待っていることだろう。

 少しでも早く再会させてあげたい。

「よし!」

 リリアは改めて意気込むと、大きな岩の向こうにいるアサギ達と再び合流するようにして、ふわふわと飛び、蔦のようになった『逆さ草』を巻き付けた。

 ほどなくして全部捲き付け終えた。

 すとっと地面に降り立つと、アサギが労う。

「姫様、お疲れ様でした」
「ううん、全然」

 リリアは、素直さが窺えるに仕草で首を横に振る。

 カマルが岩を見上げて「おぉ」と感嘆の息をもらした。

「アサギ様、俺、どうしたらいいですか?」
「あとは、この『逆さ草』に妖力を流して込んでやるだけです。何も難しい調整などいりません。微量に、全ていきわたるよう均等に三人分の妖力がこめられていますから、下位のあやかしの〝発動〟で、うまいこと逆さ効果に転じてくれるはずです」

 それは最後、カマルが自身で出来るようにと考えられて、作られた術具(もの)だからだ。

 なるほど、それでわざわざ、はじめっから妖力を込めたわけかと、リリアは今になって気付いた。やっぱりアサギは面倒見がいい。
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