半妖の狐耳付きあやかし令嬢の婚約事情 ~いずれ王子(最強魔法使い)に婚約破棄をつきつけます!~
 迷惑をかけたくない。

 リリアは父の顔を覗き込むと、その眉間のしわを指でぐりぐりと伸ばす。視線を返したツヴァイツァーが、途端に瞳の潤いを増した。

「俺の可愛いリリア、心配させてしまってごめんよ」
「ううん、いいの。もう決定事項みたいに書かれてあるし」

 会わなくちゃいけないんだ……見合いは決定なんだ……。

 その動揺は、次第にリリアの喧嘩っ早い負けず嫌いの性格に火を付けた。もともとプライドも高い。ふつふつと込み上げる怒りで、悩まされていることにも腹が立ってきた。

 二年にも及ぶ、しつっこい催促の手紙。

 ここは一発、本人に話を聞いて、いったん決着を付ける。

 リリアは心に決めた。結局のところ、子供達の気持ちが全く考慮されていないこと。そして見合いという形で、一方的に要求を押し通してきた今回の王宮側にも嫌悪感が強まった。

「失礼なことをされたら、とりあえず王子だろうがぶっ飛ばすわ」
「リリア、そんな物騒な言葉を使ったらダメだよ!」
「ははは、姫様、それ不敬にあたりますから、やるんなら『王様』の許可をもらってからやりましょうねー」

 そう言ったアサギが、続いてツヴァイツァーの肩にぽんっと手を置いた。
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