【完】無気力ですが、ベタ惚れ彼氏の溺愛方法に困ってます


「で、でも……傘まで借りるわけには」


「いいから早く帰って。風邪ひくから」


「わかってる……けど……」


それでもなかなか傘を受け取らない私に、


「さっき俺もわかるって言ったのは──」


見透かした瞳をした律くんは、


「矢坂の気持ち、俺もわかるってこと」


矢坂くんに聞こえないように、そっと私の耳元で囁いた。


「──っ、」


矢坂くんの気持ちって……。

律くん、それはクリティカルヒットです。

玲来ちゃんの拳よりも破壊力があると思います。


こんな真冬の雨の日なのに、全身が一気に熱くなって、さっきまで維持していた顔だって崩れて、真っ赤になった私は傘を受け取ったあと秒で走り出していた。
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