【新説】犬鳴村

犬鳴トンネル・リンチ焼殺事件

　　ーー今からちょうど３０年前の
　　　１９８８年１２月２５日、
　　　　　　クリスマス


　　　　ーー午前１１:１８


　２０歳の工員の柴田賢治(しばたけんじ)は３交代制の夜勤明けで大宰府の工場から家がある田川へ向かっていた。眠気(ねむけ)もピークになりちょうど『新犬鳴トンネル』に差しかかったところだった。


　すぐ前の信号が赤に変わったことの認識は微かにありはしたが、眠気のために対応が遅れた。ちょうどその時、脇道から飛び出して来た若者をひきそうになり目が覚めた。


　　　キキーーーーッ！ズズズっ！！


　砂埃(すなぼこり)を上げながら寸前のところで回避(かいひ)できた。 ところがひかれそうになったその若い男が賢治の車の方に近づいてきて、運転席に顔を近づけ窓を激しく叩いた。