もふもふになっちゃった私ののんびり生活
 朝起きて目を開けると、すぐ目の前に枝とそれに実る赤や紫、オレンジ色の果実があった。私の身体は木と木の間に挟まれるように丸くなっていたのだ。

 あっ!昨日は大木の処にたどり着いて、暗くなっちゃったから家の傍にあったこの果実を食べながら寝ちゃったんだ。……どうしよう。この家って、誰か住んでいるのかな?

 あまりにも巨大な大木に驚いて、つい家の方は後回していたが、今更ながらこの場所は私にとって安全でも、意識のある生物が私だけとは限らないのでは?と家を見てそう思い立ったのだ。

 でも、周囲に畑とか見当たらないし、ここに住んでいるとしたら、どうやって暮らしているんだろう?

 この場所の周囲は森だろうということは、一度遭遇してしまった獣同士の戦闘を見て予測できている。人が住む村か街が近くにあるかは分からないが、ここから買い出しに行くには遠いように思える。

「キュゥーーキャンッ!!」

 そ、そうだった!何か忘れてると思ったら、この世界、魔法があったよね!

 この世界に転生してから今までに魔法らしい現象に触れたのは、あの戦闘の時だけだったので、すっかり頭から抜けていたのだ。

 あの時、後ずさる私に迫る真空の刃を、私は無意識に魔法か何かをぶつけて相殺した。
 それを後から思い出して、私も魔法が使えるのでは?と色々試してみたこともあったが、結局何の反応もなかった為にそのまま放置していたのだ。

 魔法を使ってみたいという気持ちはあったけど、それよりものんびりと昼寝する方が先だったし。でも、魔法があるなら、転移魔法とかで離れた場所と自在に行き来する方法もあるかもしれないよね……。

 うーん。と迷っていると、また傾いていた身体がコテンと転がった。もう転がるのは慣れたものだ。ぷにぷにの身体ともふもふの毛並みがあるから痛みもないし、楽しいからいいのだ。

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