もふもふになっちゃった私ののんびり生活


 って、私死んだよね?なんで思考出来ているの?

 感覚的に目を開けたつもりだったけど、そこは全てが真っ白で上も下も、床の感触さえない場所だった。

 これってもしかして、あの、良く聞く転生ってヤツ?

 ここ八年は毎日仕事しかしていなかったが、それでも最初の二、三年は往復の電車の中で無料サイトの小説を読む気力はあったのだ。その中でも良く読んでいたのは、ファンタジー物。それも現実逃避が出来る異世界転生物が多かった。

「そうよ、その、異世界転生よ。最近神の間で流行っているのよ。だから私もしてみようかと思って地球を覗いていたら、丁度あなたが死ぬ処だったの。それにあなた、ここしばらく何の楽しみもなく生きて来たのに最後も自分を殺した相手のことを気遣うなんて、そんなことする人は中々いないわ。だからあなたを私の世界に転生させてあげる。魔法があって、科学が発達していない、所謂ファンタジー世界の定番みたいな世界だけど、現実だからステータスやスキルなんて都合のいい物はないの。だからなんていったかしら?チート?という能力をあげることはできないけれど、望む環境に生まれ変われさせることは出来るわ」

 ……っ!?
 今まで真っ白で何も見えなかった筈なのに、気づくと目の前に人がいた。

 いや、人?じゃない、神様、よね?多分女神様。

 人型だけど目の前にいるのに全身を知覚することさえ出来ない、ただただ圧倒的な存在だった。
 髪は恐らく足元まで長いが、顔は後光がさしていて全く判別できない。それに気づくとその存在感にひれ伏していた。

「あら?ああ、そうよね。貴方は今、魂だけの存在だから私の神としての存在に影響されてしまっているのね。ここに貴方の魂が存在し続けるにもすぐに限界が来るわ。さあ、貴方の望みは何?」

 望み?もう一度生きられるのなら。私の望みは……。


 
< 3 / 124 >

この作品をシェア

pagetop