もふもふになっちゃった私ののんびり生活
4 もふもふ少女、街へ行く!
『よしっ!じゃあ、行って来ます!!』
「はい、行ってらっしゃい。くれぐれも獣人を見ても飛びつかないで下さいね」
『わ、わかってるもん!』


 結界の外へ出る訓練が始まって何か月も経ったある日、セフィーに結界を張る時に私が集中し過ぎて纏っている風が緩み、匂いが漏れていると言われた。とても驚いた私が、それなら早く言ってくれたら良かったのに!と慌てたのに、セフィーは。

「……それだと面白くないですからね。変態のように結界の周囲で匂いを嗅ぎまわっている人がいることですし。まあ、森の奥でも平気なのは安心といえば安心ですが、それがまた気に食わないだけで」

 とかブツブツとわけのわからないことを言っていた。私は森の奥へ行かされて、何度も強い魔物に追われて心臓をバクバクしながら毎回必死で結界を張っていたのに!

 結局その纏っている風を維持したまま結界を張る訓練に時間もかかり、気づくと私ももう十一歳だ。そして、今日はとうとう街へ行く、決行の日となった。



 街へ行くにあたり、肩掛けカバンを背中に背負っている。
 人の姿でカバンを背中に回して身に着け、そのまま獣姿に変化すればキチンと獣姿でもカバンを背負えているのだ。
 そのカバンには魔法陣が組み込まれていて、無限には入らないが見た目の倍は入るので着替えに果物、それに一応売れたらと持った自作の薬なども入れた。その中には神様が用意してくれたお金もある。

 家に用意されていたのは、街で宿に泊まって一月暮らせる金額だそうだ。
 いつまでもお世話になりっぱなしなのは嫌だし、全くないと大変だしで本当に細かい処まで気をきかせて用意してくれていて、五体投地でお礼を言ったよ。

 よし!と心を決めてセフィーに手を振ると、まだ暗い中結界の境界を目指して駆け出した。


 結界の境界にはまだ夜明け前に着いたので少しずつ明るくなる東の空を見ながら少し休憩し、それから気配を殺し、気配を探りながら風を纏って駆け、何度目かの魔物をやり過ごすと、いつも引き返している森の中間地点へ無事に到着した。辺りはすっかりと夜が明け、明るくなっている。
 その場で一度休憩することにして結界を張った。

『やっぱり本番だと思うからか緊張したなー……。ここまでは上手く魔物をやり過ごせたから良かったけど、人と遭遇したらどうしようかな』

 一度だけ気づくのが遅れて鳥型の魔物に補足されかけ、結界を張って姿を隠していたのにしつこく空を周回していたから、他の魔物も集まって来てしまい結構時間が掛かってしまったのだ。

 時間も遅くなっちゃったし、今回は人に遭遇しても気配を消してやり過ごして街へ行くことを優先しよう。言葉がきちんと通じるかちょっと不安なんだけどね。

 エルフやドワーフ、それに獣人!!がいるって聞いているから、興奮して挙動不審にならないかも心配だったりする。

 確かほぼ獣が二足歩行のような獣人もいるんだよね。楽しみ!!

 まさかいきなり「もふもふさせて下さい!」とは言えないし言ったら痴女になっちゃうけど、もふもふした毛並みや尻尾には釣られそうだ。

 自分の尻尾を自分で触るのだってわさわさするもんね。セフィーにも言われちゃったし気をつけなくちゃ!

 よし!と意気込んで気配を消して風を纏うと結界を消す。そうして街を目指してまた走り出した。

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