【完】イミテーション・シンデレラ

赤色は私のメンバーカラーだ。 どのアイドルグループだって、センターは赤。

人々の印象に分かりやすく残り、物語の主役になりやすく、絶対的センターの印象を付ける色だ。理由はよく知らないが、この業界は何故かそういう仕組みになっているらしい。

そして私は国民的人気アイドルグループ’SARARA(サララ)’の絶対的エースとして、グループを牽引するアイドル南条(ナンジョウ) 岬である。

ニューアルバムを引っ提げてのドームツアー。 ファイナルは三夜連続の東京ドーム。
そしてこのツアーのファイナルコンサートで、私はアイドルグループSARARAを卒業する。


「皆、今日はありがとうございます…!
わたし…わたし…南条岬は…SARARAの一員としてアイドルを出来た事。
心から誇りに思っています…!
私が卒業しても、どうかSARARAをよろしくお願いします!」

にこりと微笑みを絶やさずに、ほろりと一筋の涙を流す。

私の為だけに用意された舞台。今日はアイドル’南条岬’がこの物語のヒロイン。

割れんばかりの声援と私の名前を呼ぶ声。 大歓声と共に悲鳴混じりの鳴き声も聴こえる。

卒業ソングと共に、会場に銀テープが舞い落ちる。既に会場のボルテージは最高潮に達していた。  その中でメンバーと手を取り合って、会場を駆け回り最後の笑顔を振りまいていく。


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