【完】イミテーション・シンデレラ

「岬、後5分ね。」

サラダを一気にかきこむ。
分刻みのスケジュール。 アイドル時代から慣れっこだけど。
卒業したてという事もあり、私を使いたいという媒体は思った以上に多かった。

「おけ!着替えます…!」

衣装さんやメイクさんに取り囲まれ、忙しなく動き回る。
私がもたもたしていたら、時間が押してしまう。

「岬はきっちり仕事してくれて助かるよ。
岬が居たグループの今のセンター?梨々花ちゃんだっけ。
ほんっとうにマイペースでまいっちゃうんだよね。」

とある雑誌社のライターさんがため息交じりに困りはてた声で言う。

それもよく聞く声ではある。 梨々花はマイペースなのだ。基本的に自分が中心で回る。
楽しくなければ笑えないし、機嫌が悪ければ不機嫌オーラも隠そうとはしない。

けれど、梨々花の文句を言う人は決まって最後に言う。

「でも憎めないんだから、不思議な子だよ」と。 何度聞いたか分かりやしない。

その度に不公平だ。と思う。 そして持って生まれた人に愛される才能を妬む。

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