箱庭の夢が醒めるまで




1週間前。



まさに晴天の霹靂とも言えるにわかに信じがたい事実が、アメリカ大統領の緊急公式会見という形で、全世界に発信された。



地球規模の天体が、地球に向かってきているのを人工衛星が観測した。



突如として現れたそれは、木星や土星といった大きな惑星の引力に影響されることなく、まっすぐと狙ったようにこちらに向かってきているのだという。



そしてシュミレーションの結果、本日の15時21分。


移動する天体の軌道上に存在している地球の衛星、月と正面衝突。



玉突きの要領で常軌の軌道から押し出された月が、そのまま地球に落ちてくる。




史上、例を見ない荒唐無稽な地球滅亡説に、人々は「馬鹿げている」と鼻で笑った。



しかし、何度も繰り返される月と地球の衝突シュミレーション映像と専門家たちの気迫迫る様子に、全世界中にパニックが広がるのにそう時間は掛からなかった。



それからの人々の行動は様々だった。


あるものは最後に大切な人に一目会いたいと全てを投げ出し、
あるものは悲嘆にくれ神に祈り、
あるものは突如として起こった非日常に面白おかしく騒ぎ立て、
またあるものはこれから起こるであろう悲劇にやけを起こした。




混沌と地獄絵図。この状況をそう言わずとしてなんと言おう。






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