はじまりはステレオタイプの告白



ーー つまらない。


彼氏といるときにこんなことを思う人はいるだろうか。私以外にも。


友人達には "好きが冷めた" と言われるけれど、違う気もするし、違わない気もする。

その話をすると決まって、付き合いが長い分、情に引っ張られてるだけだと言われてしまう。


ただの情だと言われても、今さら恋のはじまりのような甘酸っぱい感情なんてそもそもないんだから、答えをみつける術はないのに。



「昴(すばる)って、ほんとこれ好きよね」



何度目かわからないDVDを、2人がけのソファで並んでみる。自然と肩が触れ合うことや、ふんわりと香る同じ柔軟剤の匂いを心地よいとは思うけれど。

付き合いたてや、互いの家を行き来していた頃に感じていた高揚するキモチは、今はない。



…いつから、こうなってしまったんだろう。




「円(まどか)は、これだろう?」



付き合いたての頃なら。


流れ続けるエンドロールに一息ついて。次みるものを決めようと、数あるDVDの中から昴が言い当てる私の好みに、可愛く喜ぶこともできたのに。

雨の日に、部屋で2人きりでみる映画が大好きで、待ち遠しいとさえ思っていたのに。


"当たり前" として染み付いてしまった今では、一種のテンプレートみたいでつまらない。


しとしとと振り続ける雨音までもテンプレートの一つのようで、それがまた、暗記してしまうほど大好きな映画を灰色にした。


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