没落人生から脱出します!
(このふたりを王都にやるくらいなら、エリシュカに学ばせた方がよっぽど……!)

 そう思ったが、口は噤んだ。貴族が跡継ぎを優遇するのはあたり前のことだ。ただ、それを見て、味方もなくただあの屋敷でくすぶっていたエリシュカを思えば、胸が痛い。

「お嬢は昔から賢かったですよ。それに気づいていないなんてどうかしているのでは?」

 思わず擁護するようなことを言ってしまい、マクシムに含みのある視線を投げられる。

(……しまった。肩入れしすぎたかな)

「……リアンは、姉上のせいで追い出されたのに、ずいぶん優しいんですね」
「あれはお嬢のせいではありません。どちらかと言えば」

 あなた方のせいですよと口には出さず目で訴える。
 マクシムは、リアンがはっきり口に出すのを期待するように少し待ったが、リアンがそれ以上は口を開かないのを見て取り、はあとため息をつく。

「まあいいです。じゃあ、フレディが言っていた、エリクという人物に会わせてもらえませんか」
「そうだよ。ここの従業員なんでしょ? 麦わらの髪の少年。俺たちに似てるってあいつは言ってたよ」

 ラドミールも加わる。

「フレディ様と話して、ここに来られたんですか?」

 リアンは嫌そうに眉根を寄せる。

(フレディ少年は、悪気はないのにトラブルを引き込む天才だな)

 リアンは呆れ、少し考える。ある程度の確証を持っているのなら、適当な理由をつけてごまかして帰すのが一番大ごとにならないだろう。

「エリクは、事情があってここを辞めたんです」
「そうなの?」
「実家に帰ると言っていました。ここより南のタームエール地方ですよ」

 出まかせを、ラドミールは真剣に受け止め、マクシムは疑心ありげに見ている。

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