没落人生から脱出します！
「おい、店主はいるか？」

　『魔女の箒』の扉が荒々しく開かれた。入ってきたのは、身なりの整った大柄な男だ。年のころは三十歳後半くらいで、ジャケットを着ているが、肩幅があり、しっかり筋肉がついているのがうかがえる。接客担当のリーディエは慌てて笑顔を作る。

「いらっしゃいませ、お客様」
「このランプが、いきなり暴発したんだ。この店の札がついている。どう責任取ってくれるんだよ」

　彼が手に持っているランプはたしかにこの店で売っているものだ。が、リーディエはこの客に見覚えがない。不信感を持ったまま、愛想笑いを張り付ける。

「お客様。いつご購入になったものでしょうか。お名前を教えていただいても？」

　魔力を使わない道具は、その場での対面販売だが、魔道具は基本、顧客登録をしてから購入してもらう。不具合があったときの対応のためだ。

「はぁ？　なんだ、その態度は？　まずは謝罪じゃないのか？」

　男はカッとなったようにリーディエの腕をつかむ。
　悪いことに、今リアンは二階の作業場で木材加工の作業中で、トンカチをや鋸を使っているため、こちらの音に気付きにくい。ヴィクトルは食事当番でキッチンにいる。ここにいるのはリーディエとエリシュカだけだ。
　リーディエは焦りつつも、考える。立場上、リーディエはオーナーの姪であるエリシュカを守らなければならない。であれば、彼女にまずヴィクトルを呼びに行かせるべきか……。
　リーディエがそう考えて目配せしようとしたときだ。
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