転の生-うたてのせい-
 
 ──俺の村は北東の辺境にあって、とても小さい。

 でも、過去に英雄が出たこともあって、王都から兵士が派遣されている。彼らは怖いモンスターから村を護ってくれる有り難い存在だ。

 なかには、村の人と結婚して定住する兵士もいる。そのせいなのか、村から強い戦士や魔法使いが出たりしていた。

 たぶん、そういう事も見越して兵士も来ているんだと思う。

 大成(たいせい)しなかった自分の代わり──なんて言えば酷く感じるが、出来れば夢は大きくと考えてしまうんだろう。

 かあさんから、祖母は王都から派遣された優秀なアーチャーだったって聞いた。だったらきっと、俺にも凄い能力があるかもしれない。

 成人の儀を終えても、まだその片鱗すら見えてこないけど……。

 そういやあ、幼なじみで親友のアルクには先祖に凄い人はいないのに、魔法使いの素質があるとか誰かが言っていた。

 だからなのか、あいつはガキの頃から父親に期待されていた。
< 2 / 12 >

この作品をシェア

pagetop