会長。私と恋のゲームをしてください。
「こんばんは」



少しぽっちゃりしていて、お母さんと同じ年くらいの大家さんが私に気がついて挨拶をしてくれる。



「こ、こんばんは」



大家さんはにこにこの笑顔なのに、お母さんとお父さんは厳しい表情だ。

何が起こっているの?


動けない私に、お母さんが手招きをしてくれる。



「美雪。おいで」



私は緊張したまま、ゆっくり足を動かす。

そのままお母さんの隣に静かに座る。



「突然ごめんね。少し話があってね……」



大家さんが私に柔らかい物腰で話してくれる。

だけど、空気はピリッとしていて緊張する。



「家賃滞納、とかですか?」



思わず口からそんな言葉が飛び出る。



「違うわ」



大家さんが否定してくれたことに少し安堵する。


じゃあ、一体なんで……?


そういえば。

昨日、お父さんが大家さんのところへ行ったんだよね。

お母さんは詳しく教えてくれなかったけど、それも関係あるのかな。

いや、関係はあるだろうな。


私は、大家さんが事情を説明してくれるのを待つ。

大家さんは紅茶を一口飲んでから、私に向き直った。

ゴクリ、と喉が鳴る。
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