無口な彼の熾烈な想い
「そうだねえ、なんか個性的でマイペースな人来たー、って感じ?」

ホロ酔いぎみな鈴は、ホワッとした表情で首をかしげながら言った。

「誰からも突っ込みを入れられてこなかったのか、はたまた突っ込みをスルーしてきたのか・・・うちの親もそうだけど、付き合わされる方の身にもなれって感じだよね」

あっけらかんと笑う鈴に悪意は感じられない。

それは、絢斗を取り巻く環境を受け入れてくれているのか、それともただ呆れているのか判断が付かずもどかしい。

「俺の過去も・・・姉さんに聞いた?」

「女の子として育てられそうになったって話?」

「・・・ああ」

絢斗にとっては触れられたくない、正直思い出したくもない黒歴史であるが、絢斗は動物園デートで、小・中学校時代の同級生カップルファミリーに遭遇した時の鈴の毅然とした態度を思い出し、勇気を奮い立たせて言葉を待った。

「物心もついていない子供を意のままに操るのは正直許されることではないよね。それに、黙認してきた周囲にも連帯責任はあると思う」

だけど・・・と鈴は続ける。

「巻き込まれた子供にはなんの罪もないよ。幼い子供が与えられた環境に適応しなければ生きていけないのは当たり前のことだもの。その中でも絢斗さんは運命に抗った。自分にできることで毒親からの攻撃から身を守ってきたんだもの。凄いね。偉い。偉い」

いつの間にか、鈴の家の近くの夜景スポットに車を停めていた絢斗は、ホロ酔いでニコニコ顔の鈴に、助手席側から頭を撫でられて驚いた。
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