央弥は香澄のタオルしか受け取らない
✳︎

香澄が何でだろう、といった。
 
彼女の目の前で、他の子の気持ちを受け入れたような行動を取った。
それで香澄が傷ついたと思ったのなら、悪かったという気持ちと、仄暗(ほのぐら)い喜びを央弥は感じてしまっていた。

何度も何度も香澄が渡してきたタオルは、すべて好きだという気持ちだった、その事が央弥を高揚させる。

央弥は香澄が言うように、部屋に行ったとき、わざとちゃんとドアを開けておいた。
香澄の部屋は彼女の香りがしていた。
あの時央弥は全身で香澄を感じていた。

今、自分の腕の中で安心している香澄。
やっと手にした香澄に、自分のこの熱い気持ちを伝えずにはいられないと思う。

いや、彼女に思い知らせたい。

ずっと、初めて会った時から彼女に囚われ、感じている自分の獰猛(どうもう)な熱を、香澄が真面目だと言った自分の、香澄がまだ想像もしないであろう本気を。

いま、央弥の心の中を香澄が見たら、この熱をどう思うのか。
香澄は怖がるのか、それとも受け入れるのか、と確かめずにいられない自分は不真面目だろう。

なぜドアを開けていたのか、といった香澄はその意味がわかって言っているのか。

真面目さが苦しかった?
逆に不真面目さでドアを開けていた、タオルを返していた、
だのに香澄は真面目すぎだと言う。

真面目にこんな気持ちで一杯なのに、香澄の目の前で他の人の気持ちを受け入れるほど不真面目なはずがない、と思うと、その堂々巡(どうどうめぐ)りを可笑しく思い、央弥は声を出さずに笑った。

「俺の事、そんなに真面目だと思ってる?」

と低く言った。

「えっ、央弥先輩?」

香澄の体が、驚いたように反応したので、央弥はもっと閉じ込めるように腕に力を入れた。
かがんで、抱きこんで、香澄の首筋に唇をよせた。

「ドアを、閉めてもよかったの?」

と顔を埋めたまま聞いた。

「⋯⋯ 央弥先輩だから、ドアを閉めて欲しかった」

と香澄が言った。香澄は央弥の背に腕を回してシャツを掴んだ。首に央弥の唇を受け入れる。
央弥は熱い期待に震えた。
香澄の部屋で感じた彼女自身、香り、積んであるタオルは央弥への気持ち。
いま、腕の中にいる香澄の熱さ。
シャツを握る指。
彼女の気持ち。
声。
香澄がいっぱいになる。
全部が彼女になる。

「君に(おぼ)れそうだ」

と央弥が言った。


✳︎

堅物な央弥と真面目な香澄は、周囲からは模範的で健全なカップルだと思われている。

でも央弥は、大半の人の予想に反して、恋愛では堅物ではなかった。
むしろ甘く熱い彼氏、
香澄は彼女のすべてで央弥に応える。

それは2人しか知らない。

✳︎
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