離婚するはずだったのに、ホテル王は剥き出しの愛妻欲で攻めたてる
 感じた覚えのない怒りに今すぐ隣にいる高城を問い詰めたい衝動に駆られるが、唇を噛みしめて耐えた。

 シュペリユールがどうやって父のレシピを手にしたのか、新たな謎ができた。亡くなる前、ずいぶん痩せてしまった父の弱々しい笑顔がまぶたの裏にはっきりと浮かぶ。

 お父さん、必ず真相を明らかにするから。もう少しだけ待っていてね。

 心の中で父に語りかけた私は、再び小鉢の中の豆腐に箸を入れた。
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