これを愛というのなら
chapter:21
あと一件だ!行って来る!


朝、私を店まで送り届けてからーー

行ってらっしゃい、と見送る私の頭を撫でて。

今日はなぜか、お義父さんもお姉さんも居るのに、顎に指を添えて唇に触れるだけのキスをした。

何だか……もう蓮に触れられないんじゃないかって、身体が震える。


慌てて、蓮の背中を追って。


蓮!?気をつけてね!必ず帰って来てね!


振り返った蓮は、私に駆け寄ると強く抱き締めて、


震えてるな……大丈夫!必ず帰ってくるから、約束だ!


店から少し離れた道路脇にも関わらず、蓮は甘いキスをして、唇を離すと。


「愛してる」


リップ音を立てて、もう一度キスをして、行って来ます、と。

背中を向けて手を振る、蓮の背中が見えなくなるまで見つめていた。


ーーーーーー。


もうすでにディナーが始まっている時間なのに、蓮が帰って来ていない。

電話をかけても出なくて、留守電にメッセージを残しても折り返しもない。

お姉さんと家にも帰って見たけれど、帰って来た様子もない。


お義父さんが松田青果と小野鮮魚に電話を入れてくれて、忙しい時間帯にも関わらずに飛んで来てくれた二人と家に帰る。


「まだ帰って来てないよね……」


鍵を開けて中へ入っても、玄関に靴はなくて……泣きそうな私の肩を松田くんが抱いてくれて。

小野くんが、大丈夫だから、と。


「アイツに何かあったのは確かだけど、絶対に帰って来るから。信じて待ってよう」


「そうだよ!帰って来るまで俺たちが傍にいるから。なっ?」


ごめんね、と謝る私の頭を松田くんが撫でてくれる。
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