これを愛というのなら
ウェルカムパーティーが終わってから、

模擬披露宴までの時間に、

二人をチャペルに誘導して、写真を撮ったんだけど。

言葉では表せないくらい、自然体な二人が完ぺき過ぎて、、、

数枚で久保さんを満足させちゃったわ。



模擬披露宴で、料理長は。

中のベストは黒に細かい水玉で、ズボンが黒、ジャケットがシルバーグレーのモーニングコート。


梓は、薄いブルーでオフショルダーの、ディズニープリンセスをイメージしたドレス。

髪型は、ウィッグでサイドに流して。
冬をイメージした、雪の結晶とパールのピンを付けられている。


さすが、山田さん!

梓にピッタリで、本当にプリンセスみたいよ。



この模擬披露宴のキャンドルサービスでも、

二人は見つめ合って、微笑み合ってだったらしいのよ。

エスコートさんから聞いたんだけどね。



模擬披露宴が終わった会場の片付け終わりの、撮影中ーーー。


様子を見に来たらしい、島田さん。


「悔しいくらい、お似合いですね。諦め切れないんですけどね」


私に、呟くように話し掛けた、その声も。

梓を見る瞳も、敵意を感じるんだよね。

いくら敵意を向けても、料理長は振り向いてくれることはないって。

自分でもわかってるはずなのに。


「今、久保さんが全く料理長と梓に、ポーズの指示しか出してないのわかる?」


島田さんに、そう訊くと。

見てたらわかります、と摺れた言い方をされたけれど……

そこは冷静に、冷静によ。


「ひとつひとつのポーズの指示を出されて、自然と二人の視線が絡んで。笑い合ったり、微笑み合ったり、じゃれ合ったり。お互いに認め合って、愛し合ってるから自然体で、あんな事を人前で出来るのよ」


それでも、諦め切れないほど好きなのはわかるわよ。


「だけど、もう逆恨みや諦め切れない気持ちを口に出すのは止めにしない?余計に自分が苦しいだけよ」


島田さんに言いたいことは言えた!

どう出る?


わかりました、とさっきよりは感情のこもった言い方で頷いてくれたから、

まぁ、いいよね。


「坂口くんもわかった?」


実はずっと気配を感じてたんだよね。


振り向くと、驚いた顔で、


「気付いてたんですか?」


うん、気付いてたよ。

けっこう前からね。


「かっこよく宣誓布告したはいいけど、こんなの見せつけられたら、無理だってわかったよね?」


「わかりました。料理長には敵いません。負けましたね、俺。でも、仕事で料理長に認めてもらえるように頑張ります」


そうそう、それがいい。

だからさ、頑張って、と肩を叩いてあげる。


「島田さんも、梓にA棟を任せてもらえるように頑張ってみたら?頼んだ事を丁寧に、完ぺきにしてくれるから助かるって、梓が褒めてたわよ」


「…そうですか。倉本さんが、そんな風に思ってくれてること…知りませんでした。頑張ってみます」


そうよ!誰かが言ってあげて、はじめて気付くこともあるのよね。

だからさ、島田さんも頑張って、と肩を叩いてあげる。



本当に、お似合いですね。

坂口くんも島田さんも。


料理長が梓の身体を持ち上げて、クルクル回っている姿を見て。

呟くように言っていた。


今のは、久保さんに指示されてないからね。

久保さんが出すポーズの指示をこなしているうちに、

二人の世界に入っちゃったんだと思われる。



坂口くんと島田さんが、お疲れさまです、と。

その場をあとにした、タイミングで。


いい写真が今日はたくさん撮れたよ!

ご機嫌な久保さんが、満足した所で撮影終了!



本日は、お疲れ様でした!

明日も代役、お願いします。

ちなみに明日は和装だからね。




ブライダルフェア1日目。

何とか無事終了!

2日目も、二人がお客様を魅了しちゃうので、

少しだけ、梓目線に戻って。

また私、利香が2日目の様子をお伝えしますね。
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