これを愛というのなら
蓮と、従業員入り口で別れて。

新郎新婦控え室に向かう私に、

おはようございます、と島田さんが声をかけてきて。

おはよう、と返すと。


「すいませんでした。逆恨みみたいな事を言って…」


昨日まで、あんな事を言っていたのに…どうしたの?

だから、思わず。

えっ?と聴いてしまうと。


「昨日、撮影見てたんです。その時に、南さんに…お説教されてしまったのもあるんですけど、料理長と倉本さんを見てたら、私の入る隙間なんて全くなかったんだって思い知らされたんです」


ちょっと恥ずかしそうに、下を向いて。


「これからは、倉本さんにA棟を任せて貰えるように頑張るので…まだ寿退社しないで下さいね」


顔を上げて、微笑んでいる島田さん。

笑顔の方が可愛いよ。


「ふふっ。わかった。島田さんに任せて大丈夫って思うまで辞めないと思う。だから、これからもよろしくね」


島田さんの瞳をしっかりと見据えて言うと、

はい!こちらこそよろしくお願いします。


うんうん、島田さんはやっぱり。
その綺麗な笑顔がいい。


帰りの車の中で、蓮から聞いた話によると。

坂口くんも、島田さんと同じような事を言っていたらしい。




「さっ!今日も綺麗にするわよ!」


気合いの入った山田さんに、髪をセットされ。

和装だから、昨日よりも柔らかめに化粧されて。

深紅の口紅。

昨日、採寸され日本髪のカツラを被せられる。



この式場での神前式は、敢えてカツラを推奨しているから。

よっぽどカツラが嫌だって、新婦さん以外は。

だって、日本髪のカツラなんて、そうそう被ることないから。

体験してほしいっとのがコンセプト



カツラの重みで、頭が後ろに持って行かれそうになる。

昔よりは断然、軽くなったらしいけど。

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