愛を語るには、一生かけても足りなくて。
「ユウ、今日の撮影も絶好調だったなぁ」
人は誰しもが、手に入らなかったものや諦めるしかなかったもののひとつやふたつを、抱えながら生きている。
ときに人はそれを思い出と呼び、美しいものに変えて心の奥に大切にしまうんだ。
『ユウ、ありがとう。だいすき』
だけど俺の場合は、他の何を犠牲にしてでも手に入れたかった"たったひとつ"が、今でも心のすべてを占めている。
彼女のことを思い出になんかしたくない。
もう、十五年だ。
さすがに少し、自分の諦めの悪さに嫌気が差すと同時に馬鹿馬鹿しくもあり、呆れてしまう。