愛を語るには、一生かけても足りなくて。
「撮影は二週間後で──」
「なぁ……ケイちゃん、今日はここで降ろしてくんない?」
「うんうん、お前もほんとに仕事熱心に──って、はぁ!? お前、ほんと唐突になに言い出すんだよ⁉ 無理に決まってんだろ!」
突拍子のない俺のお願いに、ケイちゃんは車がひっくり返るんじゃないかってくらいに素っ頓狂な声を出した。
「んー、でも、なんか、頭冷やしたくてさ」
「頭を冷やすだぁ?」
「そう。今日はちょっと……変に、昔を思い出すっていうか。だから、なんとなく気分転換に歩いたほうがいいかなって」
「いやいやいや。お前、気まぐれがすぎるだろ……。っていうか、週刊誌の記者とかに追いかけられたら気分転換どころか、逆に憂鬱になるかもしれないぞ?」
「あー、でも、ちゃんと変装するし。別にスキャンダルになるようなことしないし大丈夫だよ。疲れたらタクシー拾って適当に帰るし、明日は午前中オフだろ? ってことで、お疲れ様ー。また明日」
「お、おいっ! マジかよ、ユウ!?」
また赤信号で車が止まった。
そのタイミングで俺は常に持ち歩いている帽子とマスク、ついでにサングラスをかけて車を降りた。