愛を語るには、一生かけても足りなくて。
「大丈夫大丈夫。今日はお客様の来店が一番少ない水曜日だし、ラストまで私だけでなんとかなるよ」
「でも……お客様が急にドドッと来たりしたら、アヤメひとりじゃ厳しくない?」
「ないない、二十時の閉店まであと十五分だよ? それに、これでも販売員歴もう六年だもん、なんとかなるよ。だからミイナは私のことなんて気にせず、久々の彼とのデート、楽しんできてね」
ミイナは、何にも悪くないんだから。
私がそう言って笑えば、彼女はようやく「ありがとう」と答えて幸せそうに微笑んだ。
「今度、アヤメに何かあったときには私がフォローするからね」
「うん、ありがとう。お疲れ様〜」
おろしたてのパンプスのヒールを鳴らして、ミイナが足取りも軽やかに店を出ていく。
私はそれを笑顔で見送ってから、静まり返った店内をぐるりと見渡した。