キス・ミー・クイック
「好きね、あなたも」


「さっきの彼を見てね。俺も久しぶりにやりたくなったんだ」


どうする? というように、石垣さんは首をかしげる。


こんなやり取りを、この二人はいつもしているのだろうか。


冗談とも、本気ともとれない、あいまいな駆け引き。


ヴェスパーを飲む石垣さんの表情からは、どちらとも読み取れない。


揺れるオレンジをしばらく眺めてから、砂夜さんはグラスを手にとり……口を付けた。


「冗談にしてほしい? それとも本気がいいかしら?」


「どちらでも。君のお気に召すまま」




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