奥手な二人の両片思い
「ちょっと弘貴! そこは空気読もうよ!」

「そっちだって苦笑いしてたろ⁉」



目の前で口論し始めた2人。
……結局どっちも、私に引いたってことか。



「大体、夏穂もお菓子作り得意じゃないだろ! 去年は砂糖と塩間違えたって言ってたし!」

「去年はバタバタしてたけど、今年は間違えないようにもう練習始めてますぅ!」



あ、だからさっき助言してきたんだ。

確かに、ギリギリになって上手く作れなくて焦るよりかは、前もって練習して準備しておくと安心するよね。

手作りはしないけど、何を買うか考えておこう。


その放課後。



「あ! モルくん!」



下駄箱の近くで上川くんを待っていると、反対側の校舎から歩いてくるモルくんを見つけた。

会釈した彼に駆け寄る。



「お久しぶりです。誰かと待ち合わせですか?」

「うん! 上川くんを待ってるの!」



一緒に登下校してるんだと話していると、ふと、バレンタインの話を思い出した。



「ねぇ! モルくんはバレンタインに何もらったら嬉しい?」



去年は黒瀬くんに意見をもらったので、今年はモルくんに求める。

直接聞いたほうが早いんだけど、狙ってます感が出そうで、なかなか言い出せないんだよね。



「んー……俺だったら甘くない物が嬉しいですけど、バレンタインは大体甘い物が多いですよね」



そういえば、甘い物は苦手って文化祭の時に言ってたっけ。

スイーツ大好きそうな見た目だから意外だ。


……って、さっき私も似たようなこと言われたんだった。

でも、私の隕石よりかはだいぶマシだ。
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