奥手な二人の両片思い
涙声で叫ぶように返事をして。



「だから……付き合ってください……」



交際を申し込むと、涙を拭う手が止まり、目の前の顔がみるみる赤くなっていく。



「どうしよう……嬉しすぎて、今すごく綿原さんのこと抱きしめたい」



そう言い、赤らんだ顔を手のひらで隠して、少し下を向いた。

だ、だ、抱きしめ……⁉



「……でもここ外だし、人目があるから無理だよね」

「い、いいよ……? 今、誰もいないし……」



返事をすると、彼はゆっくり顔を上げて目を丸くした。



「じゃあ……ちょっとだけ」



驚いていた顔が、一瞬にして嬉しそうな笑顔に。

距離が縮まり、背中に手が回された。


あっ、上川くんの匂いがする……。



「ありがとう」

「私こそ……ありがとう」



嬉しくなって、自分も彼の背中に腕を回して抱きしめた。



「好き……」



ポツリと呟いた瞬間、突然体が離れた。



「なんか……人の気配感じたから、そろそろ行こうか!」

「う、うん……」



焦った様子で立ち上がった上川くん。

気配……?
全然気づかなかったんだけど……私が鈍いだけ?
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